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mediaウェブアクセシビリティとは?|なぜ対応が必要なのかわかりやすく解説

ウェブアクセシビリティという言葉を耳にしたことはあるけれど、なんとなくでしか理解できていない、という方は多いのではないでしょうか?
ウェブアクセシビリティとは、「すべての人がウェブサイトやアプリを利用できるようにすること、または到達度」を意味しています。
この記事では、ウェブアクセシビリティについてわかりやすく紐解き、「ユーザビリティ」「グローバルデザイン」との違いやWeb制作において考慮すべきことについても解説していきます。
この記事はこんな人におすすめ!
- アクセシビリティの意味がわからない人
- 「ユーザビリティ」「ユニバーサルデザイン」との違いを知りたい人
- どのようにウェブアクセシビリティに配慮していくべきか知りたい人
ウェブアクセシビリティとは
ウェブアクセシビリティとは、年齢や障害の有無に関わらず、すべてのユーザーがWebサイトを利用できるようにすることです。アクセシビリティに取り組むことは、より多くの人にリーチし、ビジネスを拡大できる可能性を秘めています。
以下では、ウェブアクセシビリティという言葉についてさらに詳しく解説します。
アクセシビリティとは「利用しやすさ」を意味する言葉

まず「アクセシビリティ」についてみていきましょう。
アクセシビリティとは、「近づきやすさ」や「利用しやすさ」を意味する言葉です。
「アクセシビリティ」という単語は、Access(近づく、アクセスする)と Ability(能力、〜できること)に分けることができます。
ウェブアクセシビリティ=Webサイトの利用しやすさ
デジタル庁が発行している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」によると、ウェブアクセシビリティは以下のように定義されています。
ウェブアクセシビリティは、利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度
また、一般的に「ウェブアクセシビリティが確保できている」状態とは、具体的に次のような状態になることとされています。
- 目が見えなくても情報が伝わる・操作できること
- キーボードだけで操作できること
- 一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
- 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること
すべての人が公平に利用できるWebを実現するため、Web制作において、ウェブアクセシビリティの重要性を理解し、誰もが利用しやすいWebサイトの制作・運用に努めることが求められます。
なぜ今ウェブアクセシビリティが注目されているのか
近年のデジタル技術の発展によって、例えば以下のように私たちの生活はさまざまな面で変化しました。
- インターネットの普及により、情報の取得・共有が容易になった
- SNSなどを利用して、コミュニケーションが円滑になった
- クラウドサービスやAIの活用により、仕事や学習の効率化・利便性が向上した
- 動画配信サービスやオンラインゲームなど、娯楽やエンターテインメントの選択肢が広がった
これらの変化により、私たちの生活はより豊かで便利なものになりました。
しかし、使用するアプリやWebサイトがさまざまな人が使いやすい状態になっていなければ、障害者や高齢者などが十分に利用できず、情報格差や機会損失が起こってしまいます。
デジタル化が進むに伴ってウェブアクセシビリティの重要度が増しているのです。
2024年4月1日から「合理的配慮の提供」が義務化された
2024年4月1日から、障害者差別解消法が施行されました。この改正では、民間事業者の「合理的配慮の提供」が、努力義務から義務へと変更されました。合理的配慮とは以下のことを指します。
障害者が他の者と公平にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
引用:文部科学省|障害者の権利に関する条約
わかりやすく言うと、障害のある人が障害のない人と同様に社会生活を送れるように、必要に応じて環境の変更や調整を行うこと、を意味します。
合理的配慮については、以下の記事でも詳しく解説しています。本記事とあわせて参考にしてみてください。
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多くの人がウェブアクセシビリティの恩恵を受ける
ウェブアクセシビリティの恩恵を受ける人には以下のような人々が当てはまります。
- 視覚障害のある人
- 聴覚障害のある人
- 上肢障害のある人
- 色覚特性がある人
- 発達障害や学習障害、知的障害がある人
- 高齢の人
高齢化などに伴い、この人数は年々増加しています。
さらに、ウェブアクセシビリティの恩恵を受ける人には以下のような「一時的に障害がある状態の人」も含まれます。
一時的に障害がある状態の人
- 外出先で動画を見たいのにイヤホンを忘れた
- メガネが壊れてしまいいつもより目が見えにくい
- 怪我をしてボタンが押しにくい
すべての人や場面を想定して、1人でも多くの人が使えるようウェブアクセシビリティの取り組みを進めていくことが求められます。
ユーザビリティ・ユニバーサルデザインとの違いや関係性
これらの言葉は、Webサイト制作をしていてよく聞く言葉です。それぞれの違いはありますが、明確に区分できるものではなく基本理念は重複している部分もあります。

以下では、ユーザビリティやユニバーサルデザインについて紹介しつつ、ウェブアクセシビリティとの違いを紹介します。
ユニバーサルデザインとの違い
ユニバーサルデザインとは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの個人の違いにかかわらず、できるだけ多くの人々が利用できることを目指した建築・製品・情報などの設計のことです。
ユニバーサルデザインで考慮すること
- 言語や文化の違い
- 異なるデバイスや環境
- 異なるニーズや能力
ユニバーサルデザインは、はじめから、できる限りすべての人を対象とする、製品や環境全体の設計思想です。一方でウェブアクセシビリティは、ユニバーサルデザインの思想をウェブに適用したものであり、ウェブという領域で実践するための具体的な方法論といえます。
つまり、目指すゴールは同じインクルーシブ(包括的)な社会ですが、ユニバーサルデザインがその大きな理想を掲げ、ウェブアクセシビリティがその理想をウェブで実現するための重要なパーツを担っているという関係性です。
ユーザビリティとの違い
ユーザビリティとは、ユーザーが製品やシステム、Webサイトなどを使いやすいかどうかを評価する概念です。
ユーザビリティで考慮すること
- 学習性(Learnability):初めて使うユーザーでも簡単に使いこなせるか
- 操作性(Operability):操作が直感的でわかりやすいか
- 使いやすさ(Usefulness):目的を達成するために使いやすいか
- 満足度(Satisfaction):使ってみて満足できるか
ユーザビリティは、サービスのターゲットとなる特定のユーザーを対象としているのに対し、ウェブアクセシビリティは、障害のある方々をはじめ、より広範なユーザーが利用しやすいよう配慮するものです。
ウェブアクセシビリティの実践ガイドライン
ウェブアクセシビリティを実現するためには、明確な基準とガイドラインに従って開発を進める必要があります。現在、国内外で広く採用されている主要なガイドラインが2つ存在し、これらを理解することがアクセシブルなWebサイト制作の第一歩です。
JIS X 8341-3
JIS X 8341-3は、日本産業規格(JIS)として定められた、ウェブアクセシビリティに関する国内の技術的基準です。公的機関のWebサイトでは対応が実質的に義務化されており、民間企業でも導入が進んでいます。
この規格では、A、AA、AAAの3段階の適合レベルが設けられており、特にAAレベルの達成が多くの組織で目標とされています。
また、具体的な検証方法や確認手順も詳しく定められており、専門的な知識があれば体系的に進めやすい構成になっています。そのため、ウェブアクセシビリティへの取り組みを本格化する際の指針として広く活用されています。
WCAG
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、W3C(World Wide Web Consortium)が策定した国際的なウェブアクセシビリティのガイドラインです。アメリカの「セクション508」やカナダの「AODA」、イギリスやEU諸国、オーストラリアなど、世界各国のアクセシビリティ関連法や基準の根拠として広く採用されています。
知覚可能、操作可能、理解可能、堅牢という4つの原則を軸に構成され、それぞれに具体的な達成基準が設けられています。
ウェブアクセシビリティを導入するメリット・デメリット
障害者差別解消法の改正により合理的配慮の提供が義務化されたことを踏まえると、ウェブアクセシビリティへの取り組みは事業者にとって非常に重要です。そのため、一概にメリットやデメリットで考えるべきものではありません。
一方で、ウェブアクセシビリティの導入を検討する際には、そのメリットとデメリットを正しく理解することも大切です。短期的にはコストや工数の増加が見込まれる一方で、長期的にはさまざまな恩恵をもたらします。
ここでは、ウェブアクセシビリティに取り組むメリットとデメリットについて紹介します。
ウェブアクセシビリティを導入するメリット
ウェブアクセシビリティの導入により、潜在的なユーザー層の拡大が期待できます。障害者人口は日本だけでも約1,164万6,000人とされており、これらの方々への配慮は新たな市場開拓につながります。(出典:意見交換会の基礎資料)
また、検索エンジン最適化(SEO)効果も見込めるでしょう。適切な見出し構造や代替テキストの設定は、検索エンジンによるコンテンツ理解を促進し、検索順位の向上に寄与します。
アクセシビリティの全体的な向上により、すべての利用者にとって使いやすいサイトが実現されます。多くのユーザーが利用しやすいサイトになることで、利用者の増加が見込めることがポイントです。
ウェブアクセシビリティを導入するデメリット
一方で、ウェブアクセシビリティに取り組むには一定のコストと時間が必要です。既存サイトの改修には相当な工数がかかり、制作スケジュールの延長や予算の増加が避けられません。
また、デザインに制約が生じる場合もあります。色彩のコントラスト比や文字サイズの要件により、視覚的なインパクトを重視したデザインが困難になることがあります。
そのほかにも、継続的なメンテナンスが必要となるため、長期的な運用体制の整備も課題となるでしょう。
Web制作において考慮すべきウェブアクセシビリティ
ウェブアクセシビリティのポイントとしては、次のような例があります。
- 文字サイズを大きくする
- 文字色と背景色のコントラストを高める
- 見出しや段落を適切に配置する
- 画像に代替テキストをつける
- キーボードで操作できるようにする
- フォームのラベルを適切に設定する
- 音声ガイドや動画による説明を提供する
デジタル庁のウェブアクセシビリティ導入ガイドブックはJIS X 8341-3:2016に従ってわかりやすくまとめられています。Webサイトやアプリ制作に携わる方は、目を通しておくことがおすすめです。
Web制作におけるウェブアクセシビリティの取り組みステップ
効果的なウェブアクセシビリティの取り組みは、計画的に進めることが重要です。単発的ではなく、組織全体での継続的な取り組みとして位置づけることが成功の鍵となります。
具体的には、以下の4ステップを順序立てて実行することで、確実で持続可能な取り組みが実現できます。
- ガイドラインを参考に対応レベルを決定する
- ウェブアクセシビリティ方針を決める
- 制作したWebサイトをチェックする
- アクセビリティポリシーを公開する
ここでは、ウェブアクセシビリティの取り組みに関する4つのステップについて紹介します。
1.ガイドラインを参考に対応レベルを決定する
まずは、組織の状況と目標に応じて適切な対応レベルを設定します。JIS X 8341-3やWCAGの基準を参考に、目標とする達成基準のレベルを選択しましょう。
この段階では、現在のサイトの状況調査も併せて実施し、対応が必要な項目を洗い出します。
リソースと予算を考慮した上で、段階的な計画を策定することが重要です。
2.ウェブアクセシビリティ方針を決める
ウェブアクセシビリティの達成基準レベルを決めたら、組織として明確なアクセシビリティ方針を策定し、関係者間で共有します。対象となるページ範囲、達成する適合レベル、対応スケジュール、責任体制などを文書化しましょう。
また、制作チーム全体がアクセシビリティの重要性を理解し、共通認識を持てるよう研修や勉強会を実施することで、より効果的なサイト制作ができます。
3.制作したWebサイトをチェックする
実装完了後は、設定した基準に対する適合状況を詳細に検証します。自動検証ツールの活用に加えて、実際のユーザーによる操作確認も実施しましょう。
スクリーンリーダーやキーボード操作による動作確認は特に重要です。この段階で発見された問題は速やかに修正し、再度検証を行います。
第三者による外部監査を受けることで、より客観的な評価を得ることも可能です。
4.アクセビリティポリシーを公開する
最終的に、Webサイトのアクセシビリティポリシーを公開します。これには適合レベル、対象ページ、試験実施日、達成状況などの詳細情報を含めることがポイントです。
(JIS X 8341-3の試験結果は公表が求められますが、WCAGの適合確認においては、公表は必須ではありません。)
透明性のある情報公開は、利用者からの信頼獲得につながる重要な要素です。また、継続的な改善への取り組み姿勢も併せて示すことで、組織のアクセシビリティに対する真摯な姿勢をアピールできます。
まとめ:ウェブアクセシビリティに配慮したサイトづくりを
ウェブアクセシビリティは「すべての人がWebサイトやアプリを利用できるようにすること、または到達度」を意味しています。今後のデジタル化の進行にあわせて、ウェブアクセシビリティに配慮したサイト設計は、より多くのユーザーにサービスを届ける上で重要になります。
株式会社ノベルティでは、ウェブアクセシビリティに配慮した制作を行なっております。
Webサイト制作やアプリ開発について、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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