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合理的配慮とは?ウェブでの具体例を踏まえて解説します。

合理的配慮とは?ウェブでの具体例を踏まえて解説します。

ノベルティの高宮です。

令和3年の障害者差別解消法が改正されたことを受けて、Webアクセシビリティや合理的配慮についての話題をXでよく見るようになりました。

ウェブアクセシビリティが義務化するわけではなく、合理的配慮の提供が義務化するということは徐々に知れ渡っているように感じます。

今回はウェブアクセシビリティではなく、合理的配慮についてアクセシビリティとの関連性やウェブで考えられる具体的な対応例について解説します。

※筆者は法律の専門家ではないので、法律の原文や行政資料を引用するなどしてなるべく正確な情報となるよう記載していますが、正確さを保証できないことにご注意ください。

2024年から合理的配慮の提供が義務化

令和3年5月に障害者差別解消法が改正され、事業者の合理的配慮の提供が義務化されました。

また、令和3年6月には、事業者による合理的配慮の提供を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、相談体制の充実や情報の収集・提供など障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化を内容とする改正法が公布された(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号)

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針

基本方針に記載されている内容からはアクセシビリティが義務化していると言い切ることはできません。

アクセシビリティについては以下のように記載されています。

ア 環境の整備の基本的な考え方

法は、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として行政機関等及び事業者の努力義務としている。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、職員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれることが重要である。

障害を理由とする差別の解消のための取組は、法や高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)等不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づく環境の整備に係る施策や取組を着実に進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針

アクセシビリティの向上は、合理的配慮を的確に行うための環境の整備として努力義務であると位置づけられています。

つまりアクセシビリティ向上は努力義務であることがわかります。

努力義務だからといってやらなくていいわけではなく、合理的な配慮と両輪で進める必要があると明記されています。

合理的配慮とは

合理的配慮とはどのような意味でしょうか。

合理的配慮とは”障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること”です。

障害による困り感は人それぞれであるため、ユニバーサルデザインやアクセシビリティの向上を図り、環境整備をしても、すべての人が使える施設やサービスにすることはほぼ不可能です。

環境整備をしても障壁が存在し、それを取り除いてほしいという意思を伝えられたときに負担が重すぎない範囲で対応することが求められています。

ウェブでは以下のような例が考えられます。

合理的配慮の例1:代替テキストの提供

取り除きたいバリアと申出

ある音楽グループのファンである視覚障害者の方が、ライブイベントのチケットをオンラインで予約しようとしたところ、イベントのスケジュールが画像としてアップロードされていることに気づきました。

しかし、この画像には代替テキスト(altテキスト)が設定されておらず、スクリーンリーダーを使用しているため、どの日付・どの場所でライブが開催されるのかを知ることができませんでした。

彼はこの問題をチケット販売サイトの運営者に報告し、各イベントの日付、場所、および時間を説明する代替テキストの追加を求めました。

合理的配慮の提供

サイト運営者はこの問題を迅速に対処し、全てのイベントスケジュール画像に、詳細な情報を含む代替テキストを追加しました。これにより、視覚障害者も含め、全てのファンがライブイベントの情報を平等にアクセスできるようになりました。

合理的配慮の例2:キーボードナビゲーションによるウェブサイトのアクセス改善

取り除きたいバリアと申出

上肢の不自由なユーザーが、あるオンラインショッピングサイトを利用しようとしたところ、マウス操作が困難であるため、商品のカテゴリーや購入ボタンへのアクセスができない状況に直面しました。このユーザーは、サイトのフィードバックフォームを通じて、キーボードのみでサイトの全機能にアクセスできるようにする改善を求めました。

合理的配慮の提供

サイト運営者は、キーボードナビゲーションのサポートを強化し、タブキーでの移動、エンターキーでの選択が可能になるようウェブサイトの構造を改善しました。これにより、手の不自由なユーザーでもサイトをスムーズに利用できるようになりました。

教育コンテンツ動画に字幕の追加

取り除きたいバリアと申出

聴覚障害を持つ大学生がオンラインで提供されている講義の動画を視聴しようとしたところ、字幕が提供されていないため、講義内容を理解できない状況でした。この学生は、大学の教育支援部門に連絡を取り、講義動画に字幕を追加することを要求しました。

合理的配慮の提供

大学側はこの要求に応え、全てのオンライン講義動画に字幕を追加することを決定しました。これにより、聴覚障害を持つ学生だけでなく、非母語話者の学生にも、講義の内容がよりアクセスしやすくなりました。

これらの具体例のように申出に対して負担が重すぎない範囲で対応することが求められます。

負担が重すぎない範囲とは

”負担が重すぎない範囲”とはどのように判断すればいいのでしょうか。

過剰な負担の有無については明確な決まりがあるわけではなく、個別の事案ごとに以下のことを考慮して総合的・客観的に判断する必要があるとされています。

  • 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
  • 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
  • 費用・負担の程度
  • 事務・事業規模
  • 財政・財務状況

ウェブ関連では以下の例は過剰な負担と捉えて良いと考えられます。

※あくまで一例であり、実際には個別に判断する必要があります。

過剰な負担である例1:特定の障害に特化した高度なアクセシビリティの実装

特定の障害を持つ利用者一人のために、サイト全体にわたって高度に特化したアクセシビリティ機能を実装すること。

特定の個人のための高度なカスタマイズは、技術的な実現可能性、開発にかかる費用、および人的資源の観点から、事業にとって過剰な負担となり得ます。

過剰な負担である例2:一時的なプロジェクトでの全面的なアクセシビリティの再設計

短期間でのイベントやキャンペーン用のサイトにおいて、全面的なアクセシビリティの再設計や、既存のウェブコンテンツを完全に置き換えるレベルの改修を求めること。

期間限定のプロジェクトに対する大規模なアクセシビリティ対応は、限られた時間と予算の中で不釣り合いな労力を要し、事業の財政・財務状況に不相応な負担をもたらす可能性があります。

過剰な負担である例3:既存のコンテンツを全て再構築する要求

既存のサイトやアプリケーションの全コンテンツを、アクセシビリティ基準に完全準拠するためだけに、根本から再設計を求めること。

全コンテンツの再構築は、莫大なコストと時間がかかり、特に中小規模の事業では事業の持続可能性を脅かすほどの経済的負担になり得ます。

過剰な負担である例4:継続的なアップデートの即時実装

アクセシビリティに関する新たなガイドラインや技術が導入された際に、即座に全ウェブサイトやアプリケーションでの実装を要求されること。

新技術やガイドラインの即時実装は、継続的な教育や技術開発のための追加的な資源が必要となり、継続的な運用において非現実的な負担となり得ます。

合理的配慮には建設的対話が重要

実際に過剰な負担のある作業を要求された場合は申出への対応が難しい場合でも建設的な会話をして共に解決策を検討していくことが重要です。

先程の「特定の障害に特化した高度なアクセシビリティの実装」であれば、このユーザーと直接対話を持ち、どのような点で困難を感じているのか、どのようなサポートがあれば目的を達成できるのかを詳細に聞き取ります。

この対話を通じて、具体的な問題点を理解し、それに対応するための具体的な措置を講じることが、真の意味での合理的配慮の提供につながります。

具体的な対話の例はリーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」を参考にしてください。

合理的配慮は1人ひとり違い、何ができるか個別に話し合うのが重要であるため、「前例がありません」「特別扱いできません」「もし何かあったら困るので対応できません」「〇〇の障害の人は〇〇の対応をします」のような対話は避けましょう。

まとめ

本記事では合理的配慮について説明しました。

合理的配慮は初めから正解があるものではなく、申出をした人と合理的配慮を提供する人との建設的な対話により「使える」「目的を達成する」方法を見つけることであると考えます。

決して基準があるものでも、思いやりや優しさといった気持ちの話でもないことを最後にお伝えします。

お読みいただきありがとうございました。

参考資料

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